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フリートーク > 2001年11月26日バックナンバー

料理に事欠いて……(;´Д`)

 昨日のフリートークがあまりにもダークで読んでいて自分でもイタくなってくるため、とりあえずもっとまともなことを書こうと思った樋渡さん。うんにゃーいい人ぶるのもいい加減にしたほうがいいな。まじで。

 さて、なんだか筆がノルっつーか、勢い余ってアップした「遙かなる憧憬」第10話です。これで番外編は一応完結しました。
 この結末に持っていくまでに、どうやって話をつなげようか散々悩んだのです。ジョカがああいう人生を歩むことになるという設定は、この番外編を書き始める前から決まってはいたのですが、そうにも点と点を線で結べないというか、言葉が降りてこなくてなかなか先に進めませんでした。
 あの終わり方、はたしてハッピーエンドなのかそれともアンハッピーエンドなのか、見方はいろいろあると思います。私はハッピーエンドのつもりで書いたのですが、みなさんいかがでしょう。
 本当の意味で強い人というのを書いてみたかったのですね。どんな逆境も受け入れ、それに負けずに新しい道を切り開いていこうとする人。ちょうど自分がかなりダークな状態で凹みつつあるので、それが余計に出ちゃっているかも、と、読み返すと少しアイタタタな感じではあります(笑)。
 こういうこともあるからといって、自分の身に起こったことをあるがままとして受け入れるって、なかなかできないことですよね。ちょうど先日テレビドラマで車いすの弁護士が出てくるやつをやってたんですけど(タイトル忘れた)、彼はスキー中にスノーモービルとぶつかって、下半身不随となり、車いすの生活を余儀なくされてしまうんですね。だけど、そういう自分の境遇をあるがままに受け入れている。ところが、最後のほうで彼が言うんですよ。「そりゃあ、相手を恨んださ。恨んで憎んで。でも、そういう人生もあるのだと受け入れることもできる」って。そうなんですよね。こういうふうになったのは自分のせいじゃない。だから相手を恨むしかない。でも、恨んだだけではどうにもならない。こういう人生もあるのだと気づいて、気持ちを切り替えて生きていくことを選ぶわけですよ。すげいよ。オレにはできないっす。
 ジョカも、そうだと思うんですよ。彼女は一年前のあの事件でそういうことになったけど、たぶん気持ちを切り替えて、新しい人生を切り開いていこうと思ったんでしょうね。それに至るまでに、彼女はものすごく悩んで、たぶんもう死んでしまったほうがいいかもとか思ったに違いないんです。でもそれが正しい道だとは彼女は決して思わなかった。そこが彼女の本当の強さなんだと思います。
 ああ、人間はこうあるべきだよなぁという理想の人物像かもしれません。私にとってのね。
 それに比べて、セテがかなりヘタレな感じですねぇ。でも16歳とか17歳くらいって、たいがいヘタレですよね。人生よく見えてないし、わがままに生きてるっつーか。中央騎士大学を卒業して、実際に現場で仕事をするようになって見えることって、彼にとってはとてもすばらしいことだったと思います。人間は理想のためだけに生きられるわけじゃないって気づくのに、時間はかかりましたけどね。
 それにしてもレト、いいやつに書きすぎたかなという気もします。こんな感じでセテにすがってこられたら、そりゃーいやとは言えないよねぇ。本編ではもうアレな感じなのですが、イキのいいレトが書けてわたしゃ本望です(笑)。ああ、レト、まじでごめんよ。

 さて、今日は夕方買い物にでかけてラーメンを食べてしまったので、先日買ってきた豆腐の賞味期限が気になって気になって(笑)。麻婆豆腐にするつもりで買ってきたんですけど、もうおなか一杯だし、さすがに麻婆豆腐の作り置きはアレなので、仕方なく炒り豆腐にしてしまいました。明日の朝ご飯にしてがんばって食べよう。<ふだんは朝ご飯食べない人
 と料理のことを考えていたら、某所で巧馬さんの「お料理大作戦」がアップされていた。うわーいいよね。なんか料理してる場面って、妙に生活感があって、そのリアリティが好き。志麻さんのところでも「お料理ファンタジー」なる企画ものがあがっているのですが、あれを読むと自分も料理をしたくなるってんだから不思議だ。
 つーわけで、拙者もお料理番外編に着手。まだ未完成ですけど。あとたぶんにネタバレ含んでますけど。
 どうしてセテがこのふたりと暮らすようになったかとかは、本編でちょい後に出てきますので、お楽しみに〜。



お料理編 空腹は最上のソースなり

 やることがなくて体力をもてあまし気味の最近のセテは、どうも怒りっぽい。ちょっとしたことですぐカリカリするので、レイザークとベゼルはしばらく彼を放っておくことを決意した。
 自分の部屋に戻ってから、つい先ほどまでは枕を投げつけたりして散々部屋の中で暴れていたようだ。ようやく静かになったので、今はおとなしく寝ころんで本を読んだりしているらしかった。
「まったく、男のヒステリーなんてサイテーだね」
 ベゼルはわかったような口を利きながら大袈裟に肩をすくめてみせた。
「まったくだな。あいつには生理があるのかもしれんな」
 レイザークが口の端をゆがめてそう言うと、
「レディの前でそんなコト言うレイザークもサイテー。超セクハラオヤジだね」
 大人ぶった口振りでぷいとそっぽを向くベゼル。まだ十三歳なのに口ばかりは達者な少女だ。
「おーい、ベゼル、今日の夕食どうすんだ。あいつがあんな状態じゃ、俺たち飯にありつけないぞ」
 さして困った風でもないレイザークだが、実際、これは彼らにとって死活問題だ。いつもはセテがたいがい食事の支度をしてくれていたので、ベゼルもレイザークも大いに助かっていたのだ。レイザークはほとんど味オンチで、彼の作ったものは食べ物であると認識するのに時間がかかるし、男の子として育てられてきたベゼルも、特に料理が得意なわけではない。セテがくるまでのこのふたりの食生活はそれはみじめなもので、たいがい街の総菜屋で買ってくるできあいのもので済ますか、高給取りな聖騎士の金にものを言わせた外食だ。
 セテがこのふたりと暮らすようになってから、まず最初に驚いたのが彼らの食に対する姿勢だ。食えればいい、というわけで、彩りだとか健康のこととか、まったくもって考慮されていない。ひとり暮らしの長かったセテにとっては、それだけは堪えられなかった。剣以外にこれといって取り柄がない彼の、唯一の特技と言ってもいいのが料理だった。しかもその腕は半端なものではない。もたもたと台所であわてふためくふたりを押しのけ、貯蔵庫にあるものだけでさっと作ってみせたセテの料理は、レイザークとベゼルにとっては高級料理店のものかと思うくらいのすばらしい味だったのだ。
 それから、セテはこの家で料理大臣に任命された。休職中で稼ぎもないセテをレイザークが甘やかしておくわけもなく、セテは渋々ながらそれを承知し、以来この数ヶ月は三度の飯を彼らのために作る賄い人となったわけだ。
「あーもう、どうしようか。いまから買い出しに行くって言っても、もう店も閉まっちゃってるしなぁ。レイザーク、今日は外食でもしようよ」
「ちょっと待て。今日は銀行に行っていないから金を持ってねえんだ」
「ええ〜〜っ! まじかよ! なんで下ろしてこなかったんだよ! ったく、肝心なときに役に立たないオヤジだねぇ」
 忌々しげに言うベゼルを後目に、レイザークは貯蔵庫の中身を確認する。食材は昨日だかおとといだかに、セテがたんまり買ってきてくれたおかげであるのだが、彼らにはそれをどうやって料理していいのか理解できない。
「だめだ、ベゼル。俺にはこの材料を何に使うのかさっぱりわからん」
「オレにだってわかるかよ。しょうがないなぁ。セテのところに行って、ごまでもすってくるしかないね」
 ふたりはセテの部屋の前に立ち、そしてゆっくりとドアを開ける。慎重に、なにが起きても安全なように。なぜなら、セテが機嫌の悪いときに不用意にドアを開けようものなら、なにが飛んでくるかわかったものではないからだ。数日前にも、いきなりドアを開けたレイザークが、分厚い本を投げつけられてたいへんな目にあったばかりなのだ。
「おーーい、セテー?」
 ドアに隠れるようにしてベゼルが声をかけるが、当然返事はない。
「あ、あのさぁ? そろそろ機嫌直して……あれ?」
 ベゼルが部屋を覗き込むと、すうすうと静かな寝息が聞こえた。思い切ってドアを大きく開けると、セテは本を開いたままベッドに突っ伏して眠っている。
「うわー、サイアク。寝てるよ、セテ」
 ベゼルが小声でそう言うと、レイザークは史上最悪のできごとだといわんばかりに肩を落としてみせた。セテの寝起きの悪さもハンパではない。この状態で起こそうものなら、絶対にカウンターパンチを食らうハメになる。
「まいったね。どうしよ、レイザーク」
 尋ねられ、レイザークは腕を組んでしばし考える。このままセテが寝ていたほうがいいのか、それともやっぱり起こして作ってもらったほうがいいのか。どちらも究極の選択だ。寝かしてやったら食事は自分たちで作らなければいけないし、そのときは果たして料理が完成するのかさえ危うい。後者は起こした瞬間のリスクが高すぎる。ところが、
「あーあ、セテ、寝てるだけならホントかわいいんだけどなあ。これであの性格がなければ最高の美形だと思わない? レイザーク?」
 不用意にそんなことを言うベゼルに、レイザークはあわてて彼女の口を押さえる。
「このバカが! その台詞で目を覚ましたらどうする気だ!」
「う……ん」
 とたんにセテが呻いた。気配を感じ取るのに長けた彼が目を覚まさないわけがない。ふたりはあわててセテのベッドから身を引きはがし、行く末を見守る。
「……ん……?」
 髪をくしゃくしゃやりながらセテが身を起こした。サイアクの事態だ。セテは目の前にたつふたりを認めると、ものすごい目で彼らを睨み付ける。
「……勝手に部屋に入るなって言っただろ」
 静かだが低い声でセテは言った。こういうときは最高に機嫌が悪いのだ。
「あ、いや、そろそろ機嫌直したかなーってさ」
 なんで自分がこんなかんしゃく持ちの男におべっかを使う必要があるんだと憤りを感じながらベゼルはそう言った。だが、そうでもしないとこのあと彼らは食事にありつけない。
「うるせーな」
 にべもないセテの言葉にカチンときながらも、ベゼルは辛抱強く食い下がる。肝心のレイザークは部屋の外でこのやりとりをおもしろそうに眺めているだけだ。まったく頼りにならない聖騎士サマだと、ベゼルは心の中で舌打ちをする。
「あ、あのさ。食事のしたく……なんだけど……」
 セテは前髪をめんどうくさそうに掻き上げ、ベッドに座り直した。大きなため息を大袈裟についてみせ、それからベゼルを睨み付けると、
「ベゼル、お前さぁ、女だろ。少しは料理の腕を磨こうとか思わないわけ? いつまでも俺におんぶにだっこで、恥ずかしいとか思わないの?」
 最高の決め台詞だった。
「わかったよ! もうあんたにゃ頼まないよ! いいから黙って寝てればいいだろ!」
 ベゼルはそう言い捨てると、セテの部屋を飛び出した。そして廊下で待っていたレイザークを睨み付けると、
「アッタマきた! これはね、オレのプライドの問題だからな! 絶対、あいつをぎゃふんと言わせる料理を作ってやる! レイザークも来いよ! ふたりで最高の料理を作ってやろうじゃないの!」
 かくして、不器用なふたり組の料理大作戦は幕を開けるのだった。