アートハルク帝国ガートルードの聖戦宣言により、にわかに中央圏内で動揺が広がる。故ダフニス前皇帝の残した数多くの謎とともにアートハルクの中央に対する戦争が幕を開けようとしていた。そして新たな仲間を得たセテはレイザークたちとともに光都オレリア・ルアーノへ、時を同じくしてフライスとサーシェスも光都へ向かう。
別々の場所で別々の運命に翻弄されていたセテとサーシェス。ふたりが合流するとき、物語はいよいよ核心に迫る。アートハルク戦争とはなんだったのか。『神の黙示録』とは何をもたらしたのか。レオンハルトは、サーシェスは、フライスは、ガートルードは、そのとき何を思い、何を考えたのか。死せる夢見の大地は、最後に輝くのか。
中央諸世界連合から離反したレイアムラントにて、アートハルク帝国新皇帝ガートルードとレイアムラント首相による同盟結成の調印式が開催された。中央からも多くの報道陣が招かれていたが、彼らの目的はガートルード本人の口から今度の軍事行動の目的が語れること。果たしてガートルードから、5年前のアートハルク戦争勃発の経緯が語られるのだが──
集落を後にしたフライスとサーシェスは、馬車で光都までの遠い道のりを旅する途中であった。体調が回復していないものの、サーシェス本人の願いで旅立ちを決意したのだったが、その途中、馬車の中でのほとんどをサーシェスは眠って過ごすことが多くなっていた。疲労によるものだとしても眠りに落ちる時間が長すぎる。不安に思うフライスをよそに、馬車はアートハルク国境付近を通りがかる。
内緒で馬車に乗り込んだベゼルにレイザークとセテは相当な怒りをぶつけるのだったが、そこはなぜかジョーイのはからいでうまくまとまってしまう。仕方なしにお荷物なベゼルを伴って光都へ向かうことになった一行であるが、わずかな休息の合間に、ジョーイはセテと、ベゼルはアスターシャと奇妙な友好関係を築くことができたようだった。次第に一行に不思議な連帯感が生まれるのだが……
結界の裂け目から姿を現したのは、二百年前の大戦で世界を蹂躙したフレイムタイラントと同属性を持つ、暗黒の炎の化け物であった。ベゼルとアスターシャを守るために、セテとレイザークは剣を抜く。強大な攻撃力を持つ旧世界時代のモンスター相手に、王女とベゼルを守りながら戦うのは得策ではない。ひとまず馬車で逃げることを優先するのだったが……
思わぬところで思わぬ再会を果たすこととなったセテとサーシェス。双方の一行が合流したところで、彼らはそれぞれこれまでの旅路を語り始める。レイザークとフライスにはある思惑があり、それをはっきりさせておきたかった。レイザークはセテの腕をひねり上げて、彼の右手のひらの銀色の傷跡をまじまじと見つめる。
フライスから語られた〈青き若獅子〉と救世主の復活。セテは自分の人生と大陸史とのつながりにいいようのない恐怖を感じつつも、これまでの出来事を総括するようにレオンハルトと救世主との関わりを吐露する。セテとサーシェスを中心に世界が動くのか、それとも彼らが振り回されているのか、真実は光都にある。
レイザークとフライスの衝撃的な発言に混乱したセテは、宿の外で頭を冷やそうとするのだったが、そこへ同じく憔悴しきったサーシェスが。彼女の瞳に、かつてセテが感じたひたむきさや前向きな考え方は感じられなかった。人は変わるもの──。セテは自分とサーシェスとの距離感を取り戻すべく、口を開いた。
賑やかなロクラン王国の市場で、財務長官ミハイル・チェレンコフは、これが占領下の国の現状なのかどうか夢見心地であった。そんな折、彼に暗号文が寄せられる。今夜何事もなかったかのように装い、執務室に来るようにとの伝言だったが、果たしてそれは罠なのか。
ロクラン国内での工作が功を奏し、暴動騒ぎでアートハルクの指揮系統はずたずたになった。その知らせを受けたラファエラは、これまでの作戦を捨て、正面切ってロクランに突入する決意をする。手薄な検問所をねらって、三方からの同時攻撃だ。ロクラン解放のために、ラファエラは前線に立ち、鉄の淑女らしい力強い声で号令をかける。
壊滅状態の中央諸世界連合軍とともに、セテたち一行も〈光都〉オレリア・ルアーノ入りを果たした。セテは久しぶりの復帰に緊張しながら現長官マクスウェルとの会談に臨むのだが、途中、栗色の髪をした未来を知る預言者、ヴィヴァーチェが入ってきた。サーシェスとフライスはヴィヴァーチェに運命をゆだねることにしたようだったが、言いしれぬ不安がセテを襲う。
未来を知る預言者、賢者ヴィヴァーチェに囚われの身となったセテ、サーシェス、フライスの三人。それぞれが保つ過去の秘密がいま暴かれる。そしてセテは、十七年前、アジェンタスで起きたレトと同じ事件の発端となったその日に転移させられていた。ヴィヴァーチェの目的はいったいなんなのか。過去と未来を同義だと語る巫女はなにを伝えるつもりなのか。
セテをかばうように立ちはだかるサーシェスの姿をした幼女。幼い体に闘気がみなぎっている。ヴィヴァーチェに対し容赦なく術法をあびせる姿やその口調は、セテの知るロクランにいた心優しい少女とは似ても似つかないものだった。そしてセテは、17年前の事件の真相を知っていたレイザークに怒りをぶつける。なぜ隠し通したのだと。
崩落した床から落ちたセテとレイザークとサーシェスの三人。サーシェスは強力な術法を連発したためか意識を失ってしまっている。目の前には、巨大な岩のような水晶の固まりに捕らえられたレオンハルトの姿がある。祭司長ハドリアヌスは、セテたちにレオンハルトのいまの状態がなにによるものなのか、もったいつけたようなそぶりで話し始めるのだった。
意識の戻らないレオンハルトとサーシェスは即座に点滴を打たれて病院に担ぎ込まれた。セテはとにかく、いままで起こったことを頭の中で整理することもできずに混乱している。それはレイザークも同様だった。そこへ、サーシェスが目を覚ましたという知らせが。ふたりはサーシェスの病室に向かい、サーシェス本人の口から説明を受ける。
アスターシャ王女の無事は全世界に広まり、ますますエルメネス大陸の世論は分裂していく。アスターシャは記者会見だけで自分が何もできないのにいらつき、そしてセテも同様に、自分がなにもできない非力な人間であることにいらだちを募らせる。サーシェスとの短い面会時間の中で、セテはさまざまなことを聞きたかったのだが……。
ようやく落ち着きを取り戻したところで、レイザークは聖救世使教会敷地内の病院に入院しているラファエラを見舞った。途中、レオンハルトの集中治療室を通ったが、かの聖騎士はいまだ意識が戻らないようだった。ラファエラは入院していてもなお、仕事のことばかり考えているようで、レイザークは閉口する。そのとき、病室の明かりがちかちかと明滅する。電気系統の定期点検というのだが、レイザークはなぜかいやな予感を覚えていた。
辺境の港町にまで馬車を走らせ、追っ手をまいた一行であったが、レイザークはセテの言動に不満と不信だらけのようだった。セテがひとりでサーシェスを解放して光都を抜ける、そのようなことを考えつくとは思っていないのだろう。行動を監視するとまで言われたセテであったが、一行はとりあえず港町で休憩を取ることに。そこでレイザークが提案したのは、アスターシャとベゼルを光都に送り返すこと。もちろんふたりは激しく拒絶するのだが……。
すんでのところでアトラスの手から逃れられた一行を待っていたのは、辺境の蛮族の女戦士アラナ。彼女はジョーイはもちろん、レイザークとも面識があり、辺境で待つテオドラキスという人物の使いであった。テオドラキスという名は知る人ぞ知る、聖賢五大守護神《ファイブ・ガーディアンズ》のひとりで〈気〉の力を操る人物だ。一行は船で辺境を目指し、そして時を同じくして、アートハルクの軍勢も辺境へ──?
テオドラキスに促されサーシェスが語り始める。200年以上前、汎大陸戦争が始まる前のこの世界の姿を、一行はテオドラキスとサーシェスの共有幻視によって体感する。この世界がその昔、どのような姿をしてどのような文明を築いていたか、そしてそれが汎大陸戦争によってそのようにして破壊されたのか。セテたちの想像をはるかに超えた真実の始まりがいよいよ明らかに──!?
何もかも忘れてしまいたいと嘆くサーシェスに、セテは彼女の〈青き若獅子〉として何かできることがないか、そしてサーシェスの苦しみを和らげるために知っておくべきことを教えてほしいと懇願する。しばしの間悩んでいたサーシェスは、テオドラキスの「もう時間がない」という言葉に促され、セテとレイザーク、テオドラキスだけを連れ立って〈メタトロン〉と呼ばれる何かが安置される場所へ向かうことを決意した。
メタトロンの入り口を守る守護兵器の撃破に成功したセテたちは、施設の内部に足を踏み入れる。サーシェスの支援でメタトロンが本来の機能を発揮するのだが、セテにはまだ理解するまでに時間が必要である。不思議な言語で語りかけるメタトロンを前に、サーシェスはとうとう、失われた書物の真の姿について言及する。〈神の黙示録〉が甦る瞬間であった。
〈神の黙示録〉は失われた歴史を淡々と語る。この世界の始まりと、イーシュ・ラミナと呼ばれた種族の誕生や旧世界《ロイギル》の高度文明、そして、汎大陸戦争の幕開け。サーシェスの力によって仮想空間で実体化された真実の記録が、セテの目の前で明らかにされていく。〈神の黙示録〉と〈神々の黄昏〉、それらがもたらしたものは破滅の物語だった。
ガートルードの命のとおり〈土の一族〉と接触を図るべく辺境に降り立った真紅の竜騎兵アトラス・ド・グレナダは、立ち寄った居酒屋の主から〈土の核〉の場所を聞き出すことに成功した。いっぽう、真実の奔流から一夜明けたその日、落ち込むセテに発破を掛けたアスターシャのヒントからアートハルクの真の目的に気付く。彼らもまた〈土の一族〉との交渉を決意するのだが……。
〈土の一族〉の場所を聞き出したアトラスは、その類い希な才能を持つ刀鍛冶師であり、土の核を管理する一族の長であるという人物に会うために屋敷を訪れた。中央ではあまり見られない建築様式の屋敷に見とれるアトラスに、ガーディアンが襲いかかる。要所を守る役目を持つ人工生命体と対峙したアトラスはレーヴァテインを抜き、即座に戦闘態勢に入った。